本日、ノーベル物理学賞の発表があり、東京大学宇宙線研究所所長でKavli IPMUの主任研究員でもある梶田隆章 (かじた たかあき) 教授がノーベル物理学賞の受賞者の一人に選ばれました。
今回の受賞は、大気ニュートリノ振動現象を岐阜県飛騨市神岡のカミオカンデと後継のスーパーカミオカンデ検出器により捉え、ニュートリノが質量を持つ決定的な証拠を示したことが評価されました。
Kavli IPMU の村山斉 機構長のコメント
梶田さんの1998年の大発見は、当然ノーベル賞を与えるべきだ、とずっと思っていました。今までの素粒子物理学のノーベル賞は、すべて「標準理論」という現在の最高の理論を作るのに貢献した人たちが取ってきました。一方、梶田さんと、共同受賞の Art McDonald のお二人は、標準理論だけでは宇宙を説明することができないことを実験的に初めて示したのです。標準理論が物理学の終着点ではなく、今後更に大きな枠組みに変わっていくのだ、という方向性を示した歴史的な業績です。
実は「なぜ宇宙に我々が存在するのか。1対1でできた物質と反物質のバランスを10億分の1だけ崩し、完全に消滅せずにごくわずかの物質だけが残った。どうしてこのバランスを崩すことができたのか。」という文字どおり我々の存在がかかった大問題がありますが、ニュートリノが質量を持っていることがわかったために、ニュートリノが物質と反物質を入れ替える橋渡しをし、我々を完全な消滅から救ってくれた「父親」ではないか、という期待が生まれました。この考え方はカブリ数物連携宇宙研究機構の福来・柳田お二人の理論ですが、梶田さんの発見の後俄然有力視されるようになり、今では日本ではハイパーカミオカンデ実験を計画中、アメリカの素粒子物理でもこの研究を最優先で進めています。世界の素粒子物理学の研究の流れを変えた研究です。*
*2015年10月6日 21:10 に最後の2文に加筆しました。
また、10/7付で世界トップレベル研究拠点プログラム (WPI) 委員会の井村裕夫 (いむらひろお) 委員長による梶田隆章Kavli IPMU主任研究員への祝福コメントが発表されました。
(日本学術振興振興会のHPへ飛びます)
http://www.jsps.go.jp/j-toplevel/data/Kavli_IPMU%20Nobel%20Prize%20Dr.Kajita%20.pdf
参考
- 梶田隆章主任研究員によるKavli IPMU Newsに記載の記事:「大気ニュートリノとニュートリノ振動」
- 2015年ノーベル物理学賞 HP (英語)