梶田隆章主任研究員と大栗博司主任研究員が中日文化賞を受賞

2016年5月3日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)
 

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) 主任研究員の梶田隆章 (かじたたかあき) 宇宙線研究所所長と大栗博司  (おおぐり ひろし)  カリフォルニア工科大学教授が、2016年度の第69回中日文化賞の受賞者に選ばれました。

中日文化賞は、中日新聞社が日本国憲法の施行を記念して1947年に設立した賞で、学術や芸術分野で優れた業績を挙げて文化の向上に寄与したとされる個人や団体へ贈られてきました。学術分野ではこれまで、2008年ノーベル物理学賞受賞者の小林誠氏と益川敏英氏を含む6名のノーベル賞受賞者やフィールズ賞受賞者の森重文氏、物理学者であり世界トップレベル研究拠点プログラム  (WPI) のプログラムオフィサーとして Kavli IPMU を担当する三田一郎氏などが過去の受賞者として選ばれています。


梶田氏の授賞理由は2015年のノーベル物理学賞受賞につながった「素粒子ニュートリノに質量があることを示すニュートリノ振動の発見」とされ、大気ニュートリノ振動現象を岐阜県飛騨市の神岡鉱山の地下1000mにあるカミオカンデと後継のスーパーカミオカンデ検出器により捉え、ニュートリノが質量を持つ決定的な証拠を示したことが評価されました。一方、大栗氏の授賞理由は「素粒子論に現代数学を取り入れた最先端理論の開発」とされ、現代数学の成果を使って場の理論や超弦理論の新しい理論的手法を開発し、物理学の基礎的問題の解決につなげたことが評価されました。授賞式は2016年6月3日に名古屋市の中日パレスで行われる予定です。


両名の受賞に関して、Kavli IPMUの村山斉機構長は
「梶田さんと大栗さんは、お二人ともKavli IPMUの誇りです。中日文化賞は大変由緒ある賞ですが、梶田さんはノーベル賞に輝いた大気ニュートリノ振動、そしてニュートリノの質量の発見、大栗さんは素粒子と宇宙の究極理論と言われる超弦理論へ現代数学を駆使した甚大な貢献について、それぞれ業績が認められたものです。お二人とも素晴らしいのは、こうした業績にあぐらをかかず、梶田さんはこれからの重力波を使った新しい天文学と重力理論の検証、大栗さんは物性理論への応用や数学への新しい寄与など、むしろ今まで以上に活発に研究を進められています。今後の物理学と関連分野の発展に更に大きな貢献をあげられるに違いありません。これからのお二人のご活躍が楽しみです」 と述べています。


梶田隆章氏の略歴等
学歴
1981年:埼玉大学理学部卒業
1983年:東京大学大学院理学系研究科 修士課程修了
1986年:東京大学大学院理学系研究科 博士課程修了
職歴
1986年-1988年:東京大学理学部附属素粒子物理国際研究センター 助手
1988年-1992年:東京大学宇宙線研究所 助手
1992年-1999年8月:東京大学宇宙線研究所 助教授
1999年4月より:東京大学宇宙線研究所附属 宇宙ニュートリノ観測情報融合センター長
1999年9月より:東京大学宇宙線研究所 教授
2007年より:東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)主任研究員
2008年より:東京大学宇宙線研究所 所長
2015年より:東京大学 特別栄誉教授


大栗博司氏の略歴等
学歴
1984年:京都大学理学部卒業
1986年:京都大学大学院修士課程修了
1989年:東京大学より理学博士号を授与される
職歴
1986 - 1989年:東京大学理学部物理学教室助手
1988 - 1989年:プリンストン高等研究所研究員
1989 - 1990年:シカゴ大学物理学教室助教授
1990 - 1994年:京都大学数理解析研究所助教授
1994 - 2000年:カリフォルニア大学バークレイ校教授
1996 - 2000年:ローレンス・バークレイ国立研究所上級研究員を併任
2000年より:カリフォルニア工科大学教授
2007年より:カリフォルニア工科大学カブリ冠教授
2007年より:東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)主任研究員
2014年より:カリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所の初代所長

関連リンク
中日新聞社のプレスリリース

東京大学宇宙線研究所の記事

大栗博司氏のホームページ

大栗博司氏のスピーチ全文 (大栗博司氏のブログ記事より)

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